【購入者必見】バッグの○○を見て!職人の注目ポイント
バッグ選びは持ち手を見るべし?
こんにちは,革職人あきさんです。
バッグを選ぶときって,どんなところを見ますか?
特に注目するのは,ブランドや色,大きさですよね。次いで,デザインや細かな装飾,機能性といったところでしょう。
今回,職人目線で,注目していただきたいのは「持ち手」なんです!!!
なぜ,持ち手?そんな地味なところ,どれも一緒でしょ?
そう思ったあなた,裏切られたと思って続きを読んでみてください。
きっと,バッグ選びがより一層楽しくなりますよ!
職人の細かな気遣いが表れる
革職人である僕が,なぜ「持ち手」に注目してほしいかというと,そこには,職人の細かな気遣いが表れるからなのです。
持ち手はしばしば,物を入れる「袋」の部分の「おまけ」のような捉え方をされることもあります。でも,僕は決してそんなことはないと思っています。
だって普通,バッグは持ち手を握って使いますよね。(まあ,中身に大金が入っていたら,大事に両手で抱えたりすると思いますが・・・。)
例外はあるにせよ,持ち手は,バッグの中で一番手に触れる部分なんです。
だから,職人たちは,少しでも「気持ちよく」「オシャレに」使ってもらえるように・・・と,持ち手まで気を遣って作っているのです。
そう思うと,たとえ小さい部分だからと言って,見逃すわけにはいきませんよね。
では,その「持ち手たち」はどうやって作られているのでしょうか?
持ち手の作り方(一例)
今回紹介するのは,トートバッグなどでよく使われている,ベルトのように平らな持ち手です。
持ち手の種類は,世界中に数えきれないほどあります。また,その製法も職人さん一人ひとりに合った方法で行うので,今回のはあくまで「一例」にすぎません。ご了承ください。
たかが持ち手!されど持ち手!
書き出してみてびっくりしました。持ち手ひとつに7工程もしていたなんて・・・。(実際には,2度塗りや乾燥なども行うので10工程以上かかっています。)
平持ち手の作り方
①伸びどめを付ける
まずは,本革に伸びどめ用のテープを貼ります。伸びどめとは,その名の通り「伸びないようにとめるもの」です。
革はもともと動物の皮膚なので,伸びたり縮んだりします。特に持ち手の部分は,荷物の重みが狭い面積の革にかかるため,伸びやすいです。
予め,見えない部分に伸びどめを貼っておくことで,そのダメージを最小限にとどめます。
②貼り合わせる
縫う前には必ず,のりで貼り合わせます。
今回使用している革は柔らかく厚みも2mm弱しかないため,より持ちやすく強度をつけるために裏表と貼り合わせます。
伸びづらい箇所で強度の強い厚め(3mm以上)の革を使用する場合は,わざわざ貼り合わせにする必要はありません。
貼り合わせにするだけで,工程も材料も倍になります。気付かない方がほとんどですが,実はとっても手間がかかっているんです...。
③裁断する
型紙に合わせて,革包丁で切っていきます。やっとここにきて「革職人らしい」作業になりましたね(笑)
初めから型紙ぴったりに切り,後から貼り合わせることもできますが,ずれないようにするのは至難の業です。
だから,美しい断面に仕上げるために,2枚の革を一気に裁断するようにしています。少しロスが出てしまいますが,満足のいく仕上がりになるので,僕は「後から裁断派」です。
④縫う
ミシンで縫っていきます。なんだかこの写真,かっこよくないですか???
ほぼ直線&短いので,作業自体は難しくありません。ただ,ずれるとめちゃくちゃ目立ちます。小さいからと言って,気は抜かず・・・。黙々と縫います。
ちなみに僕,ミシン縫い,結構得意です。お客様から,褒めていただくこともあります。ハンドメイドをされる方などは特に、そういった部分に目が行くのでしょうね!
⑤下地を整える
革の側面を「コバ」と呼びます。
コバはそのままだと,革の繊維で「けばけば」した状態です。ナチュラルな革がお好きな方や,ファストファッション界では,切りっぱなしのことも少なくありません。
僕は,カラフルなコバが好きなので,下処理をします。
お化粧とかする時に,化粧下地とかつけますよね?それと同じです(多分)
綺麗に発色させるために専用の液体を塗ることで,コバの表面を整えていきます。
しなくても,次の工程で色はつくので,必ずやらなければならないわけではありません。僕も,商品や部分の特性によって,工程を変えながら作っていますよ。
⑥色をつける
やっと色がつきます!!!!!
突然始まる「職人あるある」下処理までが長いし手間がかかる。
バッグを作るにしても,型紙起こしや裁断などの「縫うまでにやること」の方が時間がかかるし,頭も使います。縫うのも頑張ってますが,みなさんが想像しているほど,ミシンに触れてません(笑)
多分これは,バッグに限らず,ものづくりのあるあるですね。
ちなみに,革や塗料の種類,持ち手の形によっても違いますが,何度か重ね塗りをすることが多いです。
⑦表面を磨く
仕上げに,表面を磨きます。専用のクリームを延ばし,木の棒でこすります。
塗料も性質がそれぞれ異なっており,コバ剤も塗料によって相性があるので使ってみてわかることもあります。時間があったらそれぞれ集めてみて実験してみたいものです。
塗料のざらつきやコバの凹凸が気になる場合には削りとります。
この写真だと,つるっと感が伝わりにくいので,濃い色のコバも載せますね。
・・・といったような工程を経て,持ち手が作られます。
先述した通り,これは一例です。僕の技術や思いに合っているだけで,この方法が1番優れている,正しいというわけではありません。
もし,ほかの職人さんから直接革製品を買う機会があれば,どんな風に作っているのか聞いたみたいですね~。
知っていれば選び方も変わる
というわけで,今回は「バッグの持ち手」に注目してみました。
知らなければ見もしない部分。でも,一番触れる大切な部分。
ぜひバッグ選びの視点の一つにお役立てください^^
革職人あきさんのバッグは他にもありますよ~