バッグ選びが100倍面白くなる|職人技が光る「小さいこだわり」
こんにちは,革職人あきさんです。
今回はバッグについて,職人目線で熱く語りました。
そろそろ「新しいバッグを買おうかな〜」と思っているなら,一読の価値がありますよ。また,愛用のバッグがあるならば,そのバッグのどこが気に入っているのか,改めて知り,愛着が増すこと間違いなしです。
財布作りが得意です
「バッグについて話すんじゃないんか〜い」って思いましたよね。すみません。バッグについて語る前に,僕のことを知っていただこうと思いまして・・・。
もともと僕は紳士小物を専門とする革職人だったんです。バッグや巾着などを作り始めたのは,地元日光市で独立してからだったりします。
自分のアトリエを構えてからは,得意な小物(財布やカードケース)で自分の個性を磨きながら,地道にバッグ類の製作技術を高めてきました。
幸いなことに,現代では,革製品という比較的マイナーな分野においても,書籍や動画などが多く存在しています。経験がなくとも,様々な知識を得ることができます。
学生時代,勉強が大嫌いだった僕ですが,こういうのは嫌いじゃないみたいです。むしろ,ゲームのレベル上げみたいで,無我夢中になって頑張れちゃいます。
そんなこんなで,僕のバッグ制作力は,飛ぶ鳥を落とす勢いで成長中です。(ごめんなさい,話盛りました・・・笑)
職人のこだわり・小さな部分に技が光る
職人がこだわって製作活動しているなんて当たり前ですよね。誰でも知っていることですし,こだわりのない作り手のことを「職人」なんて呼ばないはずです。
では,バッグ作りにどんなこだわりを持っていそうか,思いつくものはありますか?
こだわりの革を使用しているんでしょ?
他にはないデザインなんでしょ?
もちろん,その通りです。特に僕たち革職人は,身に付けるものを作っていますから,素材やデザインに妥協はありません。恐らく,あなたがバッグを買いに行くときに真っ先に目が行くのは,見た目の美しさではないですか?見た目が好みでなければ,手に取って質感や利便性を確かめることはしないはずです。
そこで,こちらの写真をご覧ください。
違いは,色や革の種類だけではないんですよ?違う角度の方がわかりやすいかもしれませんね。では,こちらならどうでしょうか?
どうでしょう?違いはわかりましたか?
縁のところに,細長いパイプが縫い付けられているのです。これをパイピングと呼んでいます。正直,作り手やバッグマニアでなければこんなところ見ないと思います(笑)大手メーカーやブランドバッグでも,パイピングされていたり,そうでなかったりします。
お店に行く予定のある人は,見比べてみると面白いかもしれませんよ。
ちなみに,僕の愛用しているミシンでは,パイピングができないので,すべて手縫いで付けています。1つのバッグで1500㎜以上も地道に縫い付けているんですよ。ちまちまと地味な作業が続くんです。ミシンなら一瞬で終わるのに・・・しんどいです。
なぜそんな面倒なことをしているかって?
見た目です!!!!!!!!!!
多分、詳しい方からすれば,強度が〜,とか,耐久性が〜,とかあるのでしょうが,ほぼそんなこと気にしていません!笑
見た目がいい!
ただそれだけ!
ハイピングされているほうが,高級感というか上質な感じがしませんか?あ?しないです?もしかして,僕だけです??
・・・でも,いいんです!!!!!職人のこだわりなんて,そんなもんです。僕が納得のいくように作りたいんです。
その些細なこだわりを,誰かが気付いてくれたら嬉しいし,気に入ってくれたら,すんごく幸せなんです。これからも手間を惜しまず,誰も見ていない(かもしれない)ひそかなこだわりを持ち続けたいですね。
ちなみに,世の中のバッグには,ハイピングに限らず,たくさんの小さなこだわりが詰まっています。そして無意識のうちに,そのこだわりが生み出す魅力に惹かれているのです。
今お手持ちのバッグを見てみてください。どんなこだわりがありそうですか?縫い目やコバの色(革の側面のツルツルしたところ)はどうなっていますか?改めて見つめることで,愛着が増すと思いますよ。また,新しいバッグをご検討なら,選び方の視点が増えて面白いかもしれません。
余談:バッグ作りはお金がかかる
なんだか職人のこだわりについて,かっこつけたことを言いましたが,きれいごとばかりではやっていけないのも事実です。
バッグなどの大きな商品は,コンマ数ミリに気をつかう財布などと比べると精密さはなく,少しのズレだったら,どこかで調整が可能だったりします。
しかし,みなさんもご想像いただけると思いますが,バッグは【制作費が高い】んです。
1つのバッグを作るために,大きな革を使う必要があります。当然,裏地や金具,装飾にもお金がかかります。お洒落に見せたいから,と持ち手を金具で取り付けたり・・・便利にしたいから,とチャックをつけたり・・・。こだわるほど費用がかかっていくのです(涙)
また,納得のいく商品になるように,試作を作ることがほとんどなので,材料費が,本当に,かかるんですよ,はい・・・。
結局、この革職人は何が言いたいのかというと,大切に使って欲しいな,ということ。
頼まれてもないのに,こだわっちゃうのも,利益よりもクオリティを優先しちゃうのも,全部ぜんぶ,職人の勝手なエゴに過ぎないけれど・・・。
たった1つのバッグにも,無数の想いが詰まっています。だから,気に入ってくれたら嬉しいし,大切にしてくれたら,もっと嬉しいです。
今回は,職人のこだわりについて紹介しました。みなさんのバッグ選びの参考になれば幸いです。