レベルの高い個性的な工芸品で溢れているインド。中でもカシミール地方で発展を遂げたアリ刺繍は、春を感じさせるような草花の模様が美しく、手に取った人の目を楽しませてくれます。そこで今回は、アリ刺繍の特徴や魅力について徹底解説します。インド刺繍に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

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インドのアリ刺繍とは

アリ刺繍とはカシミール刺繍の一種で、アリ針と呼ばれる太いかぎ針を用いて作るインド伝統の工芸品です。草花やフルーツなどの可愛らしいデザインをあしらっていることが多く、世界中で人気を博しています。近年ではその需要の高さから、機械を使ったアリ刺繍も盛んです。

 

ベトナムやネパール、タイなどでも機械を用いたアリ刺繍が生産されていますが、非常に精巧な作りで、手刺繍と判別するのは難しいといわれています。また、ひと口にアリ刺繍といっても、デザインやビーズなどの装飾によって、仕上がりはさまざまです。バリエーションが多いため、見た目からアリ刺繍だと判断するのは困難でしょう。

アリ刺繍の特徴

ここでは、アリ刺繍の特徴をご紹介します。

チェーンステッチを使っている

裏側から見た時に鎖のように見える「チェーンステッチ」という縫製方法を用いていることが、アリ刺繍の最大の特徴です。チェーンステッチを用いているように見えなくても、スパンコールやビーズの留めつけをチェーンステッチで行っていることもあります。

ウールを使用している

アリ刺繍の生まれたカシミール地方は年間平均気温が低いため、ウールの生地や糸などの保温性の高い素材を用いていることが特徴的です。実際に暖かいのはもちろん、見ただけで心がほっと温まるような仕上がりになっています。

職人は男性の方が多い

アリ刺繍の職人は、大半が男性だと言われています。理由としては、カシミール地方の住人はイスラム教徒がほとんどで、家事や育児の役割は女性が担っています。そのため、自由な時間は男性の方が多く、刺繍に費やす時間を確保できるためです。男性の職人が多いことは、刺繍が家事ではなく産業としての位置付けを果たしている証拠だともいえます。

仕上がりが繊細

アリ刺繍は、繊細な見た目が特徴です。アリ刺繍は、アリ針と呼ばれる特殊なかぎ針を使用して、1針刺すごとに1ミリから2ミリほどと非常に細かく進めていきます。大きな作品を作る場合には、何ヶ月もかかるケースが珍しくありません。それだけの手間がかけられているため、温かみのある繊細なデザインに仕上がります。

アリ刺繍の歴史

アリ刺繍は、12世紀ごろにインド北部で生まれたといわれています。その後、デリー周辺を起点とするムガール帝国の王族に高い評価を受けたことで、刺繍文化は目まぐるしい発展を遂げました。

 

また、アリ刺繍の基本となるデザインは、ペルシャの影響を大きく受けているため、フルーツや花柄などの自然のものをモチーフとしたものが好まれていました。近年では、同じ柄を繰り返す絵柄のパターン生地や、幾何学模様なども人気です。

アリ刺繍はどのような場面で使われている？

アリ刺繍は、ショールやバッグ、小物類、オートクチュールドレスの布地など、さまざまなシーンで人々に受け入れられています。しなやかな薄手のウール地に、こだわってデザインされたアリ刺繍の絵柄や配色のバランスが美しく、手に取った人へ感動を与えています。特にインド国内では、サリーやブラウスなどにも使用されており、毎日の生活に溶け込んだ身近な存在です。

アリ刺繍の魅力に直接触れてみよう

この記事では、アリ刺繍の特徴や魅力を解説しました。カシミール刺繍の1種であるアリ刺繍は、温かみのある草花のモチーフや、チェーンステッチと呼ばれる縫製方法が特徴の、世界中で愛されている刺繍です。

 

近年は、アリ刺繍の需要が高まったことにより、機械によって作られた作品も多く見られますが、手作業のものと判別がつかないほど精巧です。ぜひ実際にアリ刺繍の作品を手に取って、その魅力に触れてみてください。